其の五

【初めての授業】

レベル3...。その重さに私は耐えることがはたして出来るのか!?

不安だ!不安すぎる!!Barbaraが学校まで送ってくれた。今日の帰りはバスだ。足取りが重い。

構内地図を見ながら自分のクラスを探す。「ここだ。」教室を見つけた私はしぶしぶ入室することにした。

「絶対無理!!」

昨日の想像が確信に変わった。なんとみんな英語で話しているのだ!!

初めて見る多国籍な人々の会話!!ここはまさに小さな国連会議室だった。

「うわぁ.......。」私は息をのんだ。やばい。帰るなら今しかない。

教室を間違えたフリも今が最後のチャンスだ!

私が振り返りドアに向かうとしたのとほぼ同時に

「●△◇□☆※*◎◯?」

来た....。毎度の事ながら絶妙なタイミングで来た。クラスの人に話し掛けられたのだ。

「ハ、ハロ〜。」

まだ英語に対して緊張を隠せない。突然!

「ダイジョウブデスカ?」と後ろから声がした。

「はっ!」と振り返ると、眼鏡をかけた白人のおじさんが立っていた。Chack先生だ。

私はテレビ以外で初めて外人の日本語を生で聴いた。

「こ、この人は日本語も話せるんだ。

先生が話せるなら、なんとかなるかもしれない。」

私はかすかな希望の光を見い出したような気がした。

「もうやるしかない。」そう思った私は席についた。

「Good morning everyone. I am ateacher of your speaking. please call me Chack.」

と先生はペラペラっと自己紹介をした。おかしい。聞き取れた。ほとんど理解できた。

なぜだ?もしかしてこの2日間で急激にアメリカに対応したのか?

「ここでやっていける!!」

と私は思った。が、その考えは非常に甘かった。Chackが

「O.K.everybody, Pleaseexplain(introduce) yourself.」

といった。やはりなんとなく聞き取れている。しかし意味は全く分らない。

すると、一番前に座っていたどこかの国の人が突如立ち上がり、

「My name is Nicholas. I`m fromFrench. Nice to meet you.」

と自己紹介を始めたではないか!!「や、やばい....!」

つい2日前に『I`mfull.』が言えなかった人間が自己紹介など出来るわけがない!!

私は他に日本人がいないかどうか周りを見回した。

「い、いない....。」どう見てもいない!アジアのかけらも無いような人たちでいっぱいだ。

まずい!まずいぞぉおおおお!!私の緊張はピークに達した。

「◯●※*◎◯☆」

やばい...。いつものように全く理解できなくなってきた。

どうしよう....。「O.K.Whosenext? Oh! Next person is Hidemasa!」

とChackは私を指名だぁああ!!!私はひざが震えた。なんとか立ち上がりみんなの方へ向きかえると、

「...ハ、ハァ〜イ。」

うぅ。情けない....。精一杯だ。私はちらっとChackの方を見ると、

「Please say your name♪」と、笑顔で言ってくれた。よぉし!!言ってみよう!!

「マ、マイネーム イズゥ ヒ、ヒデマサァ。

ナ、ナイス トォゥ ミィチュウウゥ....。」

と震えながら言ってみた。Chackが、「Listen everybody. He is from Japan.

Most Japanese people are nervousto speak other languages, so he is just a shy boy.」

と笑顔でみんなに説明した。みんな笑顔だった。

私はこの先生はすごく日本の留学生の不安な気持ちを理解してくれているのだと安心した。

最後の自己紹介が終わり、このクラスの授業内容をChackが説明しだした。

私はちょっと高揚していて、さっぱりわからなかったのだが、周りはフンフンと聞いていた。

チャイムが鳴った!!終了だ!!たった60分の授業がこんなに私の精神を追い詰めるとは...!

教科書を片付け、教室を出ようとすると、中近東あたりから来たのであろう生徒が話しかけてきた。

「Excuse me. My name is Kaliha,I couldn`t hear your speach. May I have your name again?」

な、なんだ??首をかしげていると「What`s your neme?」と聞いてきた。

おお!名前だ!自己紹介の時、ボソボソと話したので、聞こえなかったんだろう。

私ははっきりと「マイ ネーム イズ ヒデマサ。」と言った。するとその子は

「O.K. O.K. ヒィデェマァスゥ」

「ヒ、ヒデマス...。」なんか平安時代の人のようだ。やはり私の撥音に問題があるようだ。

しかしBarbaraの件(ヒドマス)もあるので、やはり小心者の私は学校では

『ヒデマス』

を受け入れる事にした。現時点で私の名前をちゃんと分かっているのはこのアメリカにYUKIだけだ。

其の六へつづく

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