其の三
【初めての学校】
留学2日目、今日は学校がある。いきなり授業ではなく『オリエンテーション』といって、
自分のクラスを決めたり、本科の生徒とお話したりして、
外国に慣れてもらおうという企画のようなものだ。(私自身の見解)
私は『EdomondsCommunity College』といって、日本で言う短期大学にあたるような所に入学した。
普通公立大学の場合『TOEFL』というテストを受けて、だいたい550点ぐらいで入学出来る。
しかしもちろん私にその学力はなく、本科ではなくて、
本科に入っても英語で授業が理解できるように英語を勉強するクラス、
『E.S.L(English as a Second Language)』というところに入った。
その中でも5段階にレベル分けされており、科目ごとに違うレベルで、
その人の学力に応じたクラスを取ることが出来る。
私は当然のことながらレベル1を希望した。
「そんなのいきなりペラペラ話せるわけない。」
とかなり甘い考えだった私はレベル記入用紙に全部「1」と書いた。
必修科目は "Speaking" "Listening""writting" "Grammer" "Reading"
の5科目。読み書きはもちろん話すことも聴くことも、ましてや文法なんて!
と思っていた私はそのレベル記入用紙を提出するのに躊躇しなかった。
その時本科の生徒が受け付けてくれたのだが、
「●◇※*□☆?」
うぅっ...。でた!英語のうえにあきらかに疑問文だ!記入もれか?
するとその生徒の人はなにやら私のデータのような紙を出してきた。
「ん?どこかで見たような...見ないような...。」
それは英語で書かれた文章とデータベースのようなものが書いてある紙だった。
「◇□☆★△※◎*◯!!」今度はかなりの勢いで話され、私はつい
「イ、イエス...。」と答えてしまった。するとその人は「O.K!」とごきげんになった。
「なんだったんだろ??」と思いながらも用意されていたテーブルのそばにある椅子に腰掛けた。
周りには「何処の国?」と聞かずにはいられないような人たちがたくさんいた。
「アメリカの学校かぁ〜。」私はなんだか突然留学を実感してしまい、ちょっと落ち着きがなくなった。
「そうだ、タバコでもすってこよう。」御存じの通りアメリカは禁煙の国である。
その学校には喫煙所が3ケ所あった。
日本に送られてきた構内地図をみながら一番近いところを探して、いってみた。
「あはははは!イエェ〜ス!」ん?なにやら3人ぐらいで話しているようだ。
あまり話しかけてほしくない私はそのグループから少しはなれて、日本からもってきた
『Seven Stars』に火を付けた。
「Are you a studenthere?」
きた!!早速きた!!どうしよう...。難波あたりで初めてナンパされた女の子の心境だ!
「.....ハ、ハ〜イ....。」
精一杯出た一言だった。「日本人でしょ?」はっ!あれ?今日本語が....!!
あっ!!かなり日本人ばなれした女の子がそこにいらっしゃった。
今のコギャルの前身のような女の子だ。私は一瞬声が詰まったが
「そ、そう!!」と言った。アメリカで初めての日本人!
「私も今回のクゥウォーターからトランスファーしてきたの。よろしく。YUKIです。」
と握手をもとめられたが、『クゥウォーター』やら『トランスファー』やら意味不明な単語が出てきたので、
私は「はぁ。ひでまさです。」と言いながら握手した。
「◯※*◎◯◇※*※☆」と隣の外人がYUKIに話しかけた。YUKIもなにやら話していたが、
「E.S.Lでしょ。私も一緒。レベルは??」と聞かれ、「ああ、レベル1。おれ全然わかんないから。」と答えた。
「そっか。今ホストなの?」
ええっ!!!なにぃ!!!ホ、ホストぉ!?
「へ?ホストって....!?」「今住んでるとこだよ。ホスト?独り暮らし?」
ほっ。そういうことか、ホストファミリーと一緒か、独りで暮らしているかってことね!
「ホストファミリーやけど。」「そっか!じゃあ私の電話番号教えるからなんかあったら掛けてね。」
とYUKIはバックパックから紙とボールペンを取り出し、電話番号を私にくれた。
「あ、ありがと。」初めてのアメリカでの日本人の友人に私はちょっとドキドキした。
「じゃ、私は戻るから。」とYUKIは行ってしまった。楽しくなりそうだなぁと私は思った。その時
「☆※*◎▽◯◇◇□☆◆■!!」
し、しまったぁあ!!まだ二人もコミュニケーションを取れない人たちが残っていたぁ!
私はまったく何を話しているのかわからず、つくり笑顔でなんとかその場をしのいだ。
こんなんで大丈夫なのか.....?
其の四へつづく
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