其の一

【ヒデマサ】

私は19歳の時にシアトルへと旅立った。(実わハワイへは21歳のときに旅だつことになる)

初めての留学、そして初めてのアメリカ。

期待と不安を胸に『シアトル・タコマ国際空港』へ降り立った。

個人留学の為、ここからは独りで行動しなければならない。不安だ。

学生時代に最も苦手な科目だった英語をペラペラと話しているこの国で

私は生きてゆけるのだろうか・・・・・!?留学センターとかに相談する

ことなく、やってきてしまった私は、さらなる孤独感に涙目になった。

留学先の学校からの手紙を日本で直訳したところ、私を受け入れてくれる

『ホストファミリー』の人が空港へ迎えに来てくれる手はずになっているはずだ。

まだ会ったことも、話したこともない人の家にお世話になる。

コミュニケーションはとれるのか? なに語で? 恐い!

いろいろと考えていると、向こうからかなり太ったおばさんがこっちにやってきた。

「*※◎△●□☆○▲й♯?」

なにやらわからないことを話しかけられた。(疑問文だということはわかった)

私は、どう答えていいのかわからず、「えっ?ハ、ハロー。」とどぎまぎしながら発言してみた。

冷静に相手の言う事を聴いてみると、「What`s your name?」と言っている事が判明。

「そうだ!おれの名前だ!」と思った私は、かなり最悪な撥音で

「マ、マイネーム イズ ヒデマサァ!」

と、かなり大声で言ってしまった。

するとおばさんはまた「★△�※◎*▽!」と早口で私に言うと、私の手を取り、車へと案内してくれた。

「やった!!通じた!!留学生活のはじまりだ!!」と思ったのもつかの間、私が助手席に乗り込むとおばさんは

「◇◎※○□◇? ヒドゥマァスゥ?」

と私に話してきた。「ん?なんだぁ?」みたいな顔をしてみると、また

「▲■◯※*☆? ヒドゥマァスゥ?」

と言っている!「も、もしかして・・・・・!?」

そう。私の予想通りおばさんは私の名前を『ヒドマス』だと思い込んでしまった!

「やばい!これから暮らすのに!おれはヒドマスじゃなくてヒデマサだぁ!」と思い、がんばって

「マ、マイネーム イズ ヒデマサ・・・。」

と、もう一度言ってみた。しかし今回おばさんは、はっきり

「Yes! I know yourname! ヒドゥマァスゥ!」

と言って来た。あまりにハッキリと聴こえたので、

私は当分の間『ヒドマス』を受け入れることにした。

其のニへつづく

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