其の七

【習慣のちがい】

いつのまにかレベル1に慣れていった私にはたくさんの友人が出来た。

ほとんど通じない英語で私はなんとか友人たちとコミュニケーションをとっていた。

しかし、自国語の違いが、撥音に多大な影響をおよぼすとは

まさに世界共通語としての英語は名ばかりだと再認識されられた。

前回も述べたように『ナンバラ』だの『ティーチャラ』だのがまかりとおっているのである。

だが、日本人もなかなか英語の撥音に慣れない国民であるといえる。

英語にはあって、日本語にはない撥音があったりするからだ。例えば『Thank you』とか『leaves』などなどだ。

だが、現代社会に於いて、英語が話せることがそれほどすごい事ではなくなっているような気がする。

「I`m full.」

が言えないような人間が留学できる時代なのだから・・・。さて、レベル1のクラスはもちろん多国籍だ。

アラブ人、インドネシア人、メキシコ人、韓国人、中国人、そして日本人。

レベル3の時にはたくさんいた、ヨーロッパの人々はこのクラスには存在しない。

レベル3が国連会議室だったのに対して、ここは多国籍人が集まった観光地のような感じだ。

そして、彼等は(われわれもそうだが)どこにいようと決して自分のペースを崩そうとはしない。特にアラブ人だ。

彼等の信仰心はハンパではない。

「ティーチャラァ!!」

とアラブ人は時計をみながら叫んだ。「Yes, What`s happened?」

「●△※◎◯□■★!!!プゥリーズゥウウ!!」

な、なにごと・・・・?と私が思ったとき先生は何かを察したらしく、「O.K. Go ahead.」と答えた。

「ゴーアヘッドォ?たしか、どうぞ、という意味だ。なんだろ、トイレかな?」と私が思うやいなや、

突然アラブ人全員が立ち上がり、なにやらシートのような物を床に敷きだした。

「な、なんだ??」するとかれらはシーツの上に正座すると、なにやら拝みだした。

もちろんその間授業は中断。かれらはなにやら無言で拝んでいる。

そう、それはアラーの神へのお祈りなのだ!授業中だろうが、昼休みだろうが、

その時間になるとお祈りタイムに国民全員が切り替わるのだ!

「す、すごい・・・・・!」

まさに宗教国だ!私は世界は広いと再認識した。約5分ぐらいお祈りすると彼等は

「オォ〜ケェ!ティーチャラァ〜、サンキュウウウ」といって、席についた。

私はライブで『アラーの神へのお祈りタイム』を見て、ちょっとドキドキした。

おそらく彼等は子供の頃からほとんど毎日かかさずにお祈りを捧げているのだろう。感服だ。

私はそういった他の国々の習慣に大変興味を持ち、

早速クラスメイトのアラブ人『アブドゥ〜ル』(本名)に尋ねてみようと思った。

「え、Excuse me? あ、Abudule?」

すると

「Yes!」「Yes!」「Yes!」「Yes!」

と何人かのアラブ人がこちらに返事した、「ええっ!!な、なんかまずいこと言ったかな・・・・・?」と私はあせって、

「あぁ〜〜、アブドゥ〜ルゥ、プリィ〜ズ。」と困惑した顔でもう一度言ってみた。

すると、こいつはなにをいってるのだ?と言わんばかりの顔でまた、

「Yes!」「Yes!」「Yes!」「Yes!」と返事が返って来た。すると、となりの日本人のハルミチが、

「ひで、あいつらの出身国は一夫多妻制の国だから、ほとんど同じ名前だよ。」と教えてくれた。

「全員アブドゥ〜ルなのだ!!」

私はかなりびっくりした。すかさず、すごい発見をした子供のようにもう一度呼んでみた。「アブドゥ〜ル!!」

「Yes!」「Yes!」「Yes!」「Yes!」

なんか楽しい。

其の八へつづく

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